ナンバーを落とした僕は、それまでデカい顔をしていたけど急に肩身が狭くなった。
細客が数人残っていたけどほとんどがお茶だった。
それに加え、この時期多くの従業員が辞めてしまい、店はどんどん盛り下がっていた。
夜の世界、特にホストは入れ替わりの多い世界だから、これは致し方ない。
夜の世界は出入りが激しい
ホストの世界は出入りがかなり激しい。
気張って始めて見たはいいけど、全然客と喋れなかったり、従業員と馴染めなかったり、全く客を呼べず、ほとんど給料がもらえなかったりという現実を突きつけられて、すぐ辞めていく人がほとんどだ。
体験入店に来る子は、意外な事に人見知りな感じの子が多く、見た目もパッとしない子が多い。
やはりどこかしら自分を変えたいと言う願望が強い子が多いのだと思う。
根っから陽キャみたいな人はそもそも、ホストなんて始めない人のほうが多いと思う。
レールを踏み外してなければ、普通に大学に入って普通に企業に就職して順風満帆にやっていくと思う。
うちの店のレベルで言うと、一年以上続ける人は10人に1人もいなかった。
その中で結果を出せる人なんてもっと少ない訳だからこの世界で勝ち上がれる人は本当に一握りだ。
実際に僕が入店した後何人も新人が入店したけど、1年後にはまた僕が一番の後輩になっていた。
売れないホストはかなり辛い
売れないホストはかなり辛い。
客を呼べなければ給料もほとんどもらえないし、何より肩身が狭い。
売り上げ至上主義のこの世界で、後から入ってくる後輩に売り上げを抜かされれば立場が無いし、プライドが傷つく。
2年近く働いているのに、1ヶ月で一回も客を呼べない先輩だっていた。
ある程度喋れて客を呼べても、歩合に乗せない限り給料は少ない。
レギュラーである程度客を呼べていた先輩もこの期間で数人辞めてしまい、それもあって余計自分にかかるプレッシャーは大きくなっていた。
店が暇な日が続き、必然的にキャッチに出る事が多くなった。
だからと言って、客を呼べてない人全員がキャッチに出させられる訳では無く、自主性だった。
声をかけるのが苦手で、キャッチに出たがらない先輩が多かった。
僕からすれば、暇だと代表の機嫌が悪いし、店はピリピリしてるし、そんな店内にいるのが嫌だった。
知らない人に声をかけるのも別に苦じゃないから、積極的にキャッチに出た。
専らキャッチ隊だったのが、僕と先輩のゆうせいさんだった。
ゆうせいさんはキャッチの達人で、店で一番キャッチが上手かった。
僕はこの人の事が結構好きで、かなり仲良くしていたから、ここでゆうせいさんの事に少し触れておこうと思う。
アラフォーでホストになる,おじホスト
まず驚くべきはゆうせいさんの年齢。
39歳だった。
細くて背が高くてイケメンだしメイクもしてるから、ぱっと見そんな風には全然見えないけど、近くで見るとやはり年齢がかくせてない。
若さが一つの武器になるこの世界では年齢を重ねれば重ねるほど、状況が厳しくなるから大きなハンデだったと思う。
しかしもちろん人生経験を積めば積むほど、人として魅力が出てきてアドバンテージにもなる。
ホストを始めたのも35歳の時で、19歳の子供がいた。
お互いサッカーが好きだったからサッカーの話しでよく盛り上がった。
店では一番年長者だったけど、立場は下っ端の掃除組だったから、年下の先輩にいびられたりもしていた。
一度幹部のみおさんに、めちゃくちゃに飲まされて、売り上げが低い事を詰められて
「俺だって一生懸命やってんだろ!」
と、思いっきり号泣していた事があった。
その時僕は傍からその光景を見ていたんだけど、大人になってから結果が出せなくて悔しくて号泣する世界なんてそうそうないから。
「面白い世界だ」
とそんな事を考えていた。
それでも前向きにひた向きに仕事に向き合ってナンバー1を目指しているゆうせいさんが僕は好きだった。
何より現実を変えようと、必死にもがいている人が好きだ。
営業後や、営業前にも一人でキャッチをして、誰よりも客と真剣に向き合っていたけど、中々結果がついてこないのが残念だった。
売り上げは低かったけど、キャッチは上手くて、キャッチから新規の客を連れてくるのは一番多かった。
僕は彼にくっついてキャッチに明け幕れた。
ーーーエピソード17へ続くーーー
キャッチ中のゆうせいさんと僕