恋。それは甘くほろ苦いもの。
恋。それは愛おしくて切ないもの。
どうもこんにちはキャベ太です。(@yakisobaboya)
今日は僕にとって2度目の恋をした時のお話をして行きます。
ちなみに初恋の思い出の記事はこちら
まだ読んでないって方は是非読んでね!
↓
二度目の恋
時は遡って2002年。
オレは小学生になっていた。
あいも変わらず問題児だったオレは、これまたあいも変わらず小学校の先生の事を困らせていた。
とにかく悪さばかりをしていた。
同級生に暴力を振るい、授業中にガムを噛み、定期的に非常ベルを鳴らしては問題になった。
帰り道は毎日ピンポンダッシュだったし、カンチョーで何人も泣かせた。
廊下でおしっこをした時は流石に担任の末次先生にビンタされた。
まあ、幼稚園の頃と同じでとにかく問題児だった訳だ。
当時好きだった子の名前は「ゆうかちゃん」
長い髪を毎日丁寧に三つ編みにしていて、ANGEL BLUEの「ナカムラくん」のトレーナーをよく着ていて、前歯が無い子だった。
当時よく分からないけど、とにかくナカムラくんが大流行していて、女子は皆ナカムラくんの洋服を着ていた。
オレは冬でもTシャツに短パンだった。
ゆうかちゃんは明るく元気な子で、笑った顔はまるで太陽のように眩しかった。
笑った時に前歯が無いのもそれはそれで可愛かった。
不良のオレにも気さくに話しかけてくる彼女の事を気づいたら好きになっていたのだ。
そんな訳で入学当初からゆうかちゃんに片思い。
小学生と言うのはアホな物で何故か好きな子にイタズラをしてしまい、オレもよくゆうかちゃんにイタズラをして困らせた。
彼女が一生懸命消しゴムのカスを集結させて作った練り消しを勝手にゴミ箱に捨てたし、掃除の時間に彼女が一生懸命集めた埃をもう一度教室にばらまいたりした。
余談だが、小学生は何故か消しゴムのカスを集めるのが好きである。
彼女のリコーダーとゆうじくんのリコーダーを勝手に入れ替えた時は流石に泣かれた。
そんなこんなで彼女の事をいじめてばかり、思いを伝えられないまま時は過ぎていった。
小学5年生の時だ。
放課後、オレは親友のひろきと二人で帰宅していた。
何気ない話をしていたと思う。
今週のコロコロコミックの「でんぢゃらすじーさん」が面白かったかどうかとかそんな話だ。

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学校前の坂道を登りきった時、もう1人の親友のりょうたが息を切らしながら坂道を駆け上がってきた。
そしてオレたちに言った。
「はやと!ひろき!ビッグニュースだ!!!!」
キョトンとするオレ達に向けて彼は更に言った。
「ゆうかがお前ら二人の事好きなんだってさ!!!」
別にここで衝撃を受ける必要は無い。
小学生の事だ。
好きな人が二人いるなんてよくある話だ。
2組のこはるちゃんに至っては、太っちょのげんじを除いたクラスメート全員の事が好きだと公言をしていたほどだ。
オレは内心舞い上がった。
小学生の恋愛に付き合うなんて物は無い。
「両思い」になったその時点でゴールなのだ。
しかし、あくまでも硬派を貫いていたオレはりょうたを突っぱねて言った。
「はっ!だから何だよ!くだらねー!」
オレの事を番長のように慕っていたひろきもそれに習った。
「そそそそそ、そ、それが、どどど、どーしたんだよ!!」
露骨に動揺していた。
ひろきの好きな子が誰かなんて聞いた事はない。
硬派なオレは男友達ともそのような話をすることは無かった。
りょうたも一人舞い上がっていた事を察したのか素に戻って言った。
「そ、それもそーだよな!所で今週のでんぢゃらすじーさん読んだ!?」
次の日からだ。
やたらとひろきがゆうかちゃんに話しかけるのが目立つ。
逆にオレは変に意識をしてしまうようになり、彼女にちょっかいを出す事も無くなっていた。
それから二人は急速に仲良くなって行った。
「くだらねー。」
オレは女にうつつを抜かすひろきに軽蔑したふりをした。
もちろん心の中では嫉妬していた。
これもりょうたに後々聞いた話なのだが、本当は一番好きなのはオレの事で二番目がひろきだったらしい。
別に好きな人に順位があるのも小学生によくある話だ。
それからと言うものひろきは完全にゆうかちゃんにゾッコンだった。
りょうたと3人で帰ってる時だった。
長い坂道を登りきってからひろきは言った。
「はやと。お前ゆうかの事好きじゃねーのか??」
「は!好きじゃねーよ!何でだよ!!」
オレは言った。
そしてひろきはオレの事をしげしげ見ると言った。
「そうか。じゃあ、ゆうかはオレの物だ!!」
よくそんな恥ずかしいセリフを言えるものだ。
こいつの親はトレンディードラマを見るのが趣味なのだろうか。
「あっそ。」
オレは言った。
そんなオレ達の事を優しいりょうたは心配そうに見守っていた。
オレは小石を蹴飛ばした。
一年後、小学6年生の時だ。
ゆうかちゃんが転校する事が決まった。
父親の仕事の都合だそうだ。
ひろきは落ち込んでいた。
これは今に始まった事じゃ無いが、授業中や休み時間、ゆうかちゃんがひろきと話している時も、彼女がオレの事を見ているような気がした。
いや、見ていた。
ふと彼女の事を見るとよく目が合った。
恥ずかしくてすぐ目を逸らした。
淡い初恋の思い出だ。
土曜日。
ゆうかちゃんが岩手に行く日だった。
オレはりょうたと二人、円盤公園でかくれんぼをしていた。
りょうたが鬼でオレが隠れていた。
円盤公園のカタツムリの中でうずくまって隠れているオレの事をりょうたが見つけた。
そして言った。
「はやと。今日ゆうかが岩手に行く日だな。」
「そうだな。」
オレは珍しくしんみりした。
円盤公園からゆうかちゃんの家まではすぐそこだ。
時間が刻一刻と流れて行く。
ゆうかはもう行ってしまっただろうか?
オレは隠れている時にそんな事ばかりを考えていた。
かくれんぼを100回くらい繰り返しただろうか。
もう隠れる所はない。
飽きたオレ達はにブランコに座ってだべっていた。
少しの沈黙。
12時を知らせる鐘が街に鳴り響いた。
「はやと。お前行かなくていいのか」
ふと、りょうたが言った。
「は?何がだよ」
そう言いながら対照的にオレはポケットから新品の「まとまるくん」を取り出して眺めた。
ゆうかが引っ越す前に渡そうと心に決めていたが結局渡せずじまいだった。
この日も性懲りもなくポケットに入れ、まとまるくんを持ってきていたのだった。
ゆうかはまとまるくんが好きだった。
これを渡そうと思ったのも意味深だ。
「はやと。お前本当はそれゆうかに渡すつもりだったんじゃねえのか?」
りょうたはまとまるくんを眺めるオレを見て言った。
12時の鐘が鳴り終わり、道路から車が行き交う音が聞こえた。
ゆうかに会えないのが嫌だった。
意を決して勢いよく立ち上がったオレは言った。
「オレ行ってくるわ。」
「おう。」
りょうたは笑った。
オレは走り出した。
一目散にかけた。
信号が青に変わるのも待たずに走った。
トラックに轢かれそうになったのをギリギリで避けた。
息を切らして走った。
すぐにゆうかちゃんの家の前にたどり着いたが、荷物を乗せたトラックが出発する瞬間だった。
「待って!待って!」
オレは叫んだ。
しかしトラックは行ってしまう。
オレは追いかけて叫んだ。
「待って!待って!!」
渡したい物があるんだ。
このまとまるくんを渡さないとオレは一生後悔する事になる。
「待って待って!!」
思いが通じたのかトラックが停まった。
助手席の窓が空いてゆうかが顔を出した。
オレは息を切らして近づいた。
そしてゆうかに近づいて言った。
「ゆうかこれ!」
そう言ってまとまるくんをゆうかに差し出した。
「ありがとう。」
ゆうかは前歯のない歯を見せて笑った。
「私もはやとに渡したいものがあるの」
ゆうかはそう言うとサクマドロップを差し出した。
何故サクマドロップだったのだろう。
全然意味深だ。
しかし僕は言った。
「ありがとう。」
ゆうかは笑った。
窓が閉まるとトラックは走り出した。
オレはサクマドロップの缶を握りしめてそれを見送った。
それからゆうかちゃんには会ってない。
どこで何をしているのかも全く知らない。
しかし25歳になった僕は今でもそのサクマドロップの空き缶を大事に持っている。
恋。それは甘くほろ苦いもの。
恋。それは愛おしくて切ないもの。
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